11月23日

名誉院長です

りんごを食べていたら、左下の大臼歯が「ごろん」と寝転がってしまいました。少し前からぐらぐらはしていたのですが。50年前の虫歯の治療痕はありますが、風格を感じる立派な大きな歯です。今日は勤労感謝の日。60余年ご苦労様でした。「齢」と言う字は部首に歯があります。若づくりしていても「齢」はごまかせませんね。

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秋の恵み

土曜日の診療も終了し、医療消耗物品の手配などをしつつ来週に備えています。油断するとあっという間に消費してヒヤヒヤすることもしばしば。小さなクリニックに余分な在庫はムダでしかありませんが、残数みながらドキドキするのも避けたいところです。

今日から3連休という方も多いと思いますが、ポカポカ陽気の今日とは変わって、明日以降天気は下り坂。肌寒くなるようです。このところ暖かい日が続いていましたので、寒暖の差で体調を崩さないようお気をつけください。

連休最後の23日は勤労感謝の日。もともとはその年の収穫を感謝する宮中行事、新嘗祭の日にあたります。新穀を捧げる祭事由来なんですね。日本書紀には皇極天皇の時代に新嘗祭を行った記録(642年)があり、非常に古い歴史をもつ祭事です。

秋の恵みに感謝しつつ、この時期ついつい増えがちなのが体重。

特に高脂血症や高血糖で食事・運動療法と減量を指示されている方は、こまめに体重をはかって微調整をはかることをお勧めします。後からまとめて減らすのは結構大変です。

言っている私自身が毎年、四苦八苦・・・

まさに医者の不養生ですね。

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やゑさんの菊

ご無沙汰しておりました。名誉院長です。

10月1日に開院しましたが、その前後は、肉体的にも精神的にもゆとりがなく、長らくブログは院長に任せきりでした。おかげさまで開院後、クリニックは順調に滑り出し、地域の皆様にも認知されつつあるようです。

いつの間にか日が短くなり、毎年この時期を知らせる菊が我が家の庭の一角に一斉に咲きます。

今となっては立派ではありませんが、私も家内もふだん「やゑさんの菊」と呼んでいて、格別な思いをはせるのもこの時期です。

やゑさんは渥美のおばあさんで、40年ほど前、私が大学を卒業し、名古屋の南部の病院で研修を始めたころに、手術を受けた患者さんです(その時はまだおばさんでした)。しかし、渥美から名古屋は遠く、やゑさんはだんだん通院が困難となり、私の退職後しばらくしてからは、豊橋駅近の病院に通院されていたとのことでした。その間私は、大学病院、市民病院などを転々とし、何かのご縁があったのでしょう、20数年前、その豊橋の駅近病院に赴任しまた巡り合いました。

病院の外来でお付き合いさせていただいている間、やゑさんから、毎年、お正月用の菊が送られてくるようになりました。とても立派な大輪の菊で、活きが良く2月になってもまだ咲いていました。やゑさんのお宅は電照菊で有名な渥美の菊農家です。

菊が着くと、家内は家じゅうの花瓶をかき集め、菊を活けます。私は横にいて、家内が切った切れ端を、切りなおして、土に挿していきます。数年が経つとわが家の花壇の一角が菊畑のようになりました。手入れするわけではなくほぼ放置ですから、1本に一つの大きな花が咲くのではなく一本に多数の小さな花が咲きます。ときには菊よりも雑草が増えて、菊が見えなくなってしまったり、雑草にこだわりすぎて菊の根を弱らせてしまったり・・。「やゑさんの菊、大丈夫かねえ」などと言葉をかわすこともありました。

やゑさんは更に齢を重ね、豊橋への通院も難しくなり、近くの先生に経過観察をお願いしお付き合いが途切れ、それからしばらくして菊の便りもなくなりました。

この時期になると「やゑさんはどうしているかしら」と家内が口にするのが常となり久しくなりました。

つい先日、偶然にやゑさんの息子さんと出会いました。10年ほど前に「老衰」で亡くなったとのことでした。息子さんにわが家の「やゑさんの菊」の話をして二人で懐かしみました。

やゑさんの菊、今年も咲きました。IMGP2004IMGP2003IMGP2002

 

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居候

11月に入り、インフルエンザ予防接種を希望されて来院される方も増えてきています。

名古屋市の70定点での発生状況(10月26日~11月1日)を見ると計4名とのことですので、まだ流行ははじまっていないようです。インフルエンザは例年11月下旬頃から発生しはじめて12~3月にかけて猛威を振るいます。ワクチン接種後効果を発揮するのに2週程度期間が必要なことも考えて早めにワクチン接種の計画を立てましょう。

前回我々の染色体に取り込まれてしまっているウイルス(ウイルス粒子を作らせたりしないので遺伝情報の断片みたいなものですが)の話をだしました。ちゃっかり居候しているわけですが、なかには非常に大事な役割を果たしているものもいて胎盤形成に関与したり、レトロウイルス感染への防御に働いたりしている領域もあります。人類以前の遠いご先祖にウイルス感染がなければ、進化がなく、今の生命がなかったと考えると不思議ですね。

とはいっても、風邪にしてもインフルエンザにしても普段のウイルス感染はやっぱり不快で、しばしば危険。ウイルスに感謝する気にはなれませんが。

居候はウイルスに限らず、細菌由来のものもいます。我々の細胞内でエネルギー産生を担っている小器官ミトコンドリアはαプロテオ菌由来といわれています。20億年もの遠い昔にご先祖様(まだたった一つの細胞からなる生物ですが)の細胞質内にもぐりこみ共生してきました。前出の内在性ウイルスの遺伝情報は細胞核内のDNA内に断片化して取り込まれていますが、ミトコンドリアは核内とは全く別の、独自の遺伝情報(ミトコンドリアDNA)をもっています。

ミトコンドリアは糖と酸素を使ってエネルギーを作ってくれており機能不全に陥ると生命は維持できません。居候といったら失礼かな。

現在の地球上の生命はウイルスや細菌などの複雑な相互作用と進化の結果なんですね。

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