痛みもなく、簡単で確実ながんの発見方法はないか。
尿の臭いでがんを発見する方法が世界中で模索されています。泌尿器科の代表的な医学誌(THE JOUNAL of UROLOGY)に電子鼻(electronic nose)を使って尿で前立腺癌の有無を判別しようというフィンランドのグループの論文がのっているのをみて、日本でも3月に線虫を使った実験が話題になったのを思い出しました。
九州大学の研究チームによる報告で、体長 1mmの線虫に、がん患者とそうでない人の尿を嗅がせると、そうでない人の尿を避け、がん患者の尿に反応をしめしたというもの。
実験に使用された線虫は犬と同程度の約1200種の嗅覚受容体があるそうで、非常に「鼻がいい」ようです。なお嗅覚神経を破壊すると、この反応は消失しており、著者らは「線虫はがんの有無を臭いで判別し、しかもその臭いを好む」という結論を導いています。
がんの種類は同定できないようです。逆にいうと、がんに共通の「臭い」があるということでしょうか。
嗅覚といえば、代表は犬。犬はかなり以前から研究されており、最近の発表ですと、今年3月の「第97回米国内分泌学会」で訓練された犬が尿から甲状腺癌が嗅ぎ分けられることをアーカーソン医科大学が報告をしています。34の尿サンプルから30の甲状腺癌を正しく診断できたそうです。
犬が診察室でがんの有無を教えてくれるなら非常に助かりますね。
横で座っていてもらって、膀胱がんなら「ワン」 前立腺がんなら「ワンワン」 腎がんなら「ワンワンワン」 素晴らしい! 無駄な痛い検査もずいぶん減ります。
ただ犬は個体差があり、訓練も必要な様子。1クリニックに1匹とはいかないようです。
線虫飼いますか・・・ うーん・・・
いずれの研究も、がん患者さんの尿に含まれる特異的な物質の同定にはいたっておらず、さらなる研究や、再現性の有無の評価などが必要な段階ですが、将来尿でがんの有無を簡便に評価できる日が来るかもしれませんね。