今日は2月29日、4年に一度の閏日です。3月が近づき春を感じさせる温暖な日が増えてきています。
かと思えば、今日のようにぐっと冷える日もあり、寒暖の変動の大きい時期なので体調を崩さないよう注意が必要です。
この時期を代表する花といえば梅。このところの名誉院長のブログでも取り上げられていますね。奈良時代までは「花」といえば桜よりも梅をさすことが多かったほど古来より愛されてきました。
梅の花はみやびですが、我々泌尿器科領域には嫌われものの「梅」があります。
過去には不治の病と恐れられた「梅毒」です。
植物の梅には種を守るため青酸配合体が含まれているので、梅(特に青梅の時期)に毒があるのは事実。人間は昔から梅の実を漬けたり、干したりして毒性を解除して食物としてきました。
じゃあ「梅毒」と「梅の毒」に何か関係があるのかというと、全く関係ありません。
梅毒はトレポネーマといわれる微生物の感染によるものだからです。
名前の由来は、その発疹の見た目から。
トレポネーマに感染すると3週ほどの潜伏期間を経て性器などに硬性下疳と呼ばれる潰瘍ができたりしますが、痛みやかゆみなどの自覚症状がないことも多く本人は気づかないこともあります(第1期)。その後3か月程度でトレポネーマが全身に散布され増殖、全身に赤い発疹が出現します(第2期)。この発疹が揚梅(やまもも)に似ているとされ揚の字がとれて「梅毒」というネーミングになっています。
名前の由来にもなったこの発疹、治療しなくても1か月程度で自然に消失しますが、病原体は体内に残り、徐々に臓器や中枢神経などにダメージを与えていくことになります。
日本では近年この梅毒が急速に拡大していることが報告されています。
先人達の苦闘の末、現代では根治可能な感染症となっていますが、自覚症状が乏しかったり、症状が自然消失したりするため、非常に有名な感染症なのに我々泌尿器科医にとってもなかなか早期発見しづらい要注意疾患です。
週末にランニングで立ち寄った名古屋城と一枝の「本当の」梅。見頃です。